Luna's Monologues

わたしの「贅沢」




不況で、今年の正月は家で過ごす人が多いという。うちもそのクチだ。

元日には夫婦で奈良県橿原神宮まで足をのばした。思ったほど人は多くなかった。寒い一日だったからだろう。

小学生のころは遠足やらで橿原神宮には来ただろうが、もちろん中年となった今、そんなことは覚えていない。でもなぜか懐かしい。

社殿の正面に距離を置いて立ち、眺めてみる。空は曇っていたが、ときどき切れ目から弱い陽光がさしてくる。明治時代に創建されたもので、新しいのだが、日本の建築の美しさにうたれた。境内に陽光がさしたり、雲にすうっと消し去られたりして、静寂というものが目に見えるように感じられる。

精神的に未熟な親元に生まれて、複雑な人間関係のなかで過ごしてきたわたしは、ひとと関わっているよりは、こうして静かな雰囲気のなかでたたずむほうを好む。やや風が強いのも、雰囲気に没頭する助けになった。瞑想しているのではないが、そういう気分に耽った。

鑑賞する、などという高度なことはわたしにはできない。しかしたったひとりで「美」というものにひたることは、そう、わたしにとっては「贅沢」である。「幸福」ではない、贅沢、だ。ほんものの贅沢だと思う。

贅沢は金ぴかな暮らしに埋もれることだけを言うのではない。贅沢は悪徳というイメージがあるが、人間には贅沢に耽る時間が必要だと思う。音楽で言えば「間奏曲」。何も考えずに、ひたすら心地よい雰囲気に心をゆだねる。感傷もなければ、そう、愛情に温もることすらない。自分ひとりだけの快楽。

静けさ、わたしはそれを、男からの愛よりも愛する。

うしろで夫が、寒い、と言い出した。ムードを理解しないやつ。わたしはにっこりしてふり返り、「なんか食べに行こうか」と答えた。南門をくぐるときには、肩を並べた。空には冬独特の、岩のようにごつごつした雲が水色の空のあちこちに重なっていた。
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by psychic-luna | 2010-01-02 20:02
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